レアメタル投資入門

貴金属ETFを組み込んだ最適なポートフォリオを作ろう!という目的ではじめましたが、最近はイロモノETFの紹介サイトになりつつあります。

【プラチナETF】~プラチナへの投資~【1541&PPLT)】

 ブログ更新を2ヶ月以上もサボってしまいました。久々の更新ですが、今回は貴金属のトリを飾るプラチナ(白金)について紹介と考察をしていきたいと思います。

  なお、2019年11月2日現在のプラチナ価格は3,700円/g(MMC販売価格)です。

 1.白金(以下プラチナ)とは

 プラチナは白金族に属する遷移金属元素で、融点が高く耐食性に優れ、化学的に安定していて酸化しにくい特性を持ちます。また、非常に希少な金属で埋蔵量は金よりも少ない元素です。 

2.プラチナの産地と需給

表1. プラチナの産地と需給の推移

 

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 プラチナの生産地の約7割は南アフリカに偏っており、残りがロシア、ジンバブエ(!?)と続いています。その南アフリカの鉱山も内情は厳しいらしく、政治情勢や労働争議、労働安全上のリスク等々に晒されており、市場を独占していても安泰とは程遠いようです。

 また、プラチナの用途としては、全体の約4割が自動車用排ガス触媒、3割が宝飾品で、その他化学プラントにおける触媒としても用いられています。自動車用排ガス触媒は主にディーゼル車用の触媒として用いられており、ディーゼル車のシェアが高い欧州でのプラチナ消費量は他地域よりも多くなっています。ちなみに、以前に紹介したパラジウムはガソリン車用の触媒として用いられています。

一方で投資用は2017年で全体消費量の4%と比較的低い比率ですが、ETF含む投資用プラチナの需要は増えつつあるというデータもあります。 

3. プラチナETF

 プラチナ購入方法は金・銀と同様に現物購入、投資信託等各種ありますが、このサイトではETFに焦点を絞って検討していきます。

 

 その1. 1541プラチナ信託(プラチナの果実)

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 図1. プラチナの果実価格チャート

 

管理会社:三菱UFJ信託銀行

ベンチマーク東京商品取引所 先物価格(1gあたり)

純資産:約95億円

経費率:0.55%

年初来高値:3,195円

年初来安値:2,628円

取引量:3,957株(2019/11/1)

分配金:なし

 

 今回は珍しく東証ETFを先に紹介します。プラチナの果実は東証の商品ETFとしては取引量は多く1日あたり1千から10万株程度で推移しています。(ちょっと差が多くないですかねぇ?)。ベンチマークは国内先物取引所のプラチナ1グラムあたりの価格です。プラチナETFを買うにあたっては特別理由が無い限り、プラチナの果実を買えばいいかと思います。理由は次項。

  

その2. PPLT(アバディーン・スタンダード・フィジカル・プラチナム・シェアズ)

PPLTはプラチナ価格に連動するETFです。米国でプラチナ単独に投資できるETFで買えるものはPPLTのみです。

 

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図2. PPLT価格推移チャート

 

運営会社:Aberdeen

ベンチマーク:ロンドンプラチナ価格

純資産:約729百万ドル

経費率:0.60%

52週最高値:93.47ドル

52週最安値:73.84ドル

平均出来高:約22万株

購入できる証券会社:サクソバンク証券のみ

 

解散。PPLTがプラチナの果実に勝っているのが純資産と出来高くらいしかありません。普段私は東証ETFのことをボロクソに言う傾向がありますが、今回は素直に東証ETFの方が良いと断言できます。

 

4. プラチナへの投資に関する考察

 ここで少し金属元素以外の「プラチナ」という言葉がどのように用いられているか考えてみることにします。「プラチナチケット」「プラチナカード」等、高い希少性や上位のブランド価値を持つイメージがあり、それはゴールド(金)以上の価値であると認識されています。一方で、現実のプラチナの価格は意外とシビアです。

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図3 金VSプラチナ 価格推移表(ドル/オンス)

 こちらは金とプラチナの1オンスあたりの価格比較の長期推移を示したものです。1960年代より長期に渡ってプラチナ価格は金価格を上回り、とりわけ90年代後半から2008年ごろまではプラチナの価格は金を大幅に上回っており、まさに貴金属の王者として君臨してきました。一方でリーマンショック以後はプラチナ価格は下落の一途で、現在は金に50%近い価格差をつけられています。(金5,800円/グラムに対して、プラチナ3,700円/グラム)

表2. 米国貴金属ETF

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表3.日本貴金属ETF

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 次に米国と日本の主な貴金属ETF時価総額を表にしたものをご紹介します。今まで弊ブログにて金、銀、パラジウムそしてプラチナと4種の貴金属ETFをご紹介してきましたが、それぞれの貴金属間で時価総額を比較してみました(一部未紹介のもの有)。すべての貴金属ETFを網羅したものではないのでご注意願いたいのですが、おおよその規模感はわかるものかと思います(以下のパーセンテージについても参考扱いです)

 米国も日本も貴金属ETFとしては金が占める割合が9割近いという点では共通しますが、銀及びプラチナの規模が大きく異なっている点が見て取れます。米国では金と銀で99%近くを占めている一方で、日本では金の次に総資産が多いETFはプラチナで金とプラチナを併せて約95%程度を占めています。また、米国に上場している商品ETF(GSG、DBC等)が組み入れている貴金属は金と銀です。

 以上より、米国ETFにおいてはプラチナの重要度は低いと言えます。実はプラチナを買うのが好きなのは日本人だけなのではないかという説まで私の中では浮上しています。このあたりをより詳細に調べるに当たっては米国と日本(加えて英国も必要でしょうが)の現物/先物取引における金、銀、プラチナの取引量を比較する必要があるのかもしれませんが、それは今後の課題といたします。

 

5.プラチナ価格の今後

 現在のプラチナ価格は金に比べて劣後しています。また、主な用途はディーゼル車用の部品ですが、自動車生産台数は景気動向を受ける上に数年前にフォルクスワーゲンが起こしたディーゼル車の検査不正の影響もあり、ディーゼルエンジン搭載車の今後の生産自体が疑問視されているのが現状です(ボルボディーゼルエンジンやめるってさ)。また、生産の大半を占める南アフリカでは当座の利益確保のためにプラチナ輸出を止められないという事情もあり、供給過多が叫ばれています。いくつかのレポートを読む限り、プラチナ価格は当面軟調に推移するという予想が多いです。一方で、ETF含む投資用商品として需要が高まることで需給に関係なく価格が高騰する可能性があるという正反対の予想もされています。以上より、プラチナ価格は下がり続ける、上がり続ける両方の可能性が示されている状況です。

 私個人としては、上昇余地はあるものと考えています。というのも、比較対象の金や銀に比べて下がりすぎている点に加え、ガソリン自動車用触媒として用いられているパラジウムが高騰しすぎており、代替としての白金触媒が開発される可能性がある…かもしれないという理由が挙げられます。一方で、今の相場環境でプラチナをポートフォリオに加える理由があるかという点は別であることは付け加えておきますが。

 

6.まとめ

・プラチナETFを買うなら1541(プラチナの果実)

・思ったよりプラチナの価値は高くない。レア度と価値は別

・プラチナ価格の今後は専門家の間でも割れている

 

[参考文献]

・ファクトシート

・鉱物資源マテリアルフロー2018 5.白金族(PGM) (JOGMEC)

・PGM Market Report May 2019 (Johnson Matthey)

 

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