レアメタル投資入門

貴金属ETFを組み込んだ最適なポートフォリオを作ろう!という目的ではじめましたが、最近はイロモノETFの紹介サイトになりつつあります。

【PALL】パラジウムETF~Aberdeen Standard Physical Palladium Shares等【他2本】

 前回のパラジウム記事に続いて、パラジウムETFについてご紹介いたします。

 

metal-resources.hatenablog.com

 はじめに申し上げますが、2019年3月現在のパラジウム価格は投機的な値動きをしており、書いている瞬間にも大きく変動しています。したがって、商品価格や時価総額等の数値については参考値とさせてください。また、ETFファクトシート等の参考資料は書かれた時期によりパラジウム価格が全く異なっているため、記事の内容に不整合が発生している可能性があります。

 

1.パラジウムETF(PALL)とは

 PALLは金属パラジウムの地金を運用しているETFで、Aberdeen Asset Managementによって運営されています。NYSEに上場しているパラジウムETFはこれが唯一になります。投資先としてはパラジウム地金を直接購入するもので、現物はロンドンに保管されています。

 ちなみに、国内株式市場でパラジウムを買えるETFは2種類ありますので、珍しく日本の方が投資の選択肢が多い商品です。

 

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ベンチマーク:Spot Palladium LPPM specifications

設定日:2009年12月30日

経費率:0.60%

時価総額:約255百万ドル

52週最高値:152.97ドル

52週最安値:79.61ドル

地金本数:1453本(2018年12月31日時点)

平均出来高:約43,400

 

 この数年間は右肩上がりのチャートを描き、3月20日に最高値の152ドルをつけています。その後数日で20%近く下落していますので、かなり投機的な値動きをしていると言えるでしょう。この記事を書いている前日に6%以上値下がりした後、今日は3%以上の値上がりと、貴金属らしからぬ値動きをしています。出来高も平均は4万程度ですが、この記事を書いている前日は16万と、かなり過熱感を覚えます。 

2.PALL vs GLD vs SPY

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 PALLとGLD(金ETF)、SPYの3年パフォーマンスを比較したところ、PALLはGLDとSPYいずれにも大幅にアウトパフォームしています。貴金属らしからぬ動きだと思いましたので、パラジウム、金、銀、白金と株価の相関係数を次に示してみます。

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 金、銀、白金の各貴金属はお互いに中程度の相関が見られる一方、パラジウムの値動きは他の貴金属とは異なっており、かなり異質さを感じます。

 

3.日本市場のパラジウムETF

 日本国内市場に上場しているパラジウムETFも併せて紹介してしまいます。

・純パラジウム上場信託(現物国内保管型)(1543)

現在価格:45400円(3月29日現在)

管理会社:三菱UFJ信託銀行

ベンチマーク東京商品取引所パラジウム地金(10gあたり)

経費率:0.54%

時価総額:約7億円

出来高:約730(3月29日現在)

 

パラジウム上場投資信託(1675)

現在価格:15790円(3月29日現在)

管理会社:ETFセキュリティーズ・マネジメント・カンパニー・リミテッド

ベンチマーク:Spot Palladium LPPM specifications(0.1ozあたり)

経費率0.49%

時価総額:約145億円

出来高:4(3月29日現在)

 

 【1543】は国内の地金価格を参照するパラジウムETFで、時価総額は約7億円と米国のPALLよりも少ないですが、経費率は安いです。出来高は国内ETFの例に漏れずかなり少ないですが、あまり量を買う金融商品でもないでしょうから、PALLよりも利用価値は高いと言えるでしょう。

 【1675】は更に経費率が安いですが、出来高がいくらなんでも小さすぎます。時価総額は書類上では多いですが、そもそも購入機会が無いと言えます。正直言って、かなり謎なETFです。保管管理はHSBC銀行USAで行っているようです。

 いずれの国内パラジウムETFについて言えることですが、単位重量(1g)あたりの価格はPALLとほぼ同一です。出来高の少なさによる流動性コストはあるでしょうが、パラジウムはわざわざ海外ETFであるPALLを購入せずとも、【1543】パラジウム上場投資信託で済むと思います。海外ETFより国内ETFの方が有用と言える珍しい例かもしれません。私はいずれも遠慮しておきますが。

 

4.パラジウムの保管や備蓄に関する勝手な想像

 正直なところ個別金属ETFは書くことがあまりないので、パラジウムの保管と備蓄について想像してみます。パラジウムを地金として保管しているとのことですが、どれだけの物量感になるのか少々検討してみます。数値は2018年12月31日付けのデータで計算しました。

 総額187百万[USD]÷パラジウム価格1270[USD/オンス]≒14.7万オンス⇔4570kg

 14.7万オンス÷1450本≒100オンス/本⇔3.1kg/本

 1本当たりの地金の重量は約3.1kgで、1450本あります。パラジウムの比重は12g/ccですので、4570kgのパラジウムの体積は

 4670kg÷12kg/L≒380L

となります。空間の半分程度専有するように配置した場合でも、1m3もあれば収まりそうですので、それほど広い空間は必要なさそうです。大型の金庫にでもしまっているのかもしれませんね。

 また、保管管理しているパラジウム約4.6トンですが、これは年間の世界需要である約300トンには遠く及びません。仮にPALLを精算してパラジウムを市場に放出したとしても、気休め程度の供給量と言えるでしょう。

 一方で、国内で保管管理している【1543】のパラジウム時価総額で約7億円、重量に換算するとわずか約170kgしかありません。日本国内のパラジウム輸入量は約60トン程度のため、国内備蓄としては役にたたないでしょう。

 以上は手元にあるデータを元にした完全な想像です。

 

5.結言

パラジウムETFは国内ETFの方が質・量ともに充実している。ただし出来高が少ないので、売買時は注意

パラジウム価格は金、銀、白金、株式いずれにもほとんど連動しない投機的な値動き。

・個別金属ETFは書くことが無い

 

あとがきというか雑感

 価格高騰が叫ばれるパラジウムですが、投資先としては非常に難しいと言えるでしょう。時価総額や取引量もさほど大きくなく、政治や報道に振り回されて非常に投機的な値動きをしています。前回の記事でも書きましたが、このように価格や供給が不安定な原材料を用いている場合、代替品を開発するモチベーションにつながってしまいます。いずれのETFも地金で保証された金融商品ですが、金属として担保されているのと資産としての価値が担保されているのは別と考える必要があると思います。

 

3月29日現在、海外ETF村の週間INで3位を拝受しております。

これも当ブログを来訪して頂いております皆様のおかげです。

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